Wave Rock


 最初の目的地は、パースから350kmほど離れた「Wave Rock」という岩だ。けっこうな距離だが、日帰りだ。

 とりあえず、レンタルを申し込んであるバイクを受け取りに行く。バイクのレンタルは、旅行会社を通じて予約してある。パースのはずれにある小さなレンタルバイク屋だった。バイクのレンタル契約に関する説明を一通り聞き、国際免許を提示して、一人ずつ契約書にサインした。バイクは、ヤマハのヴィラーゴが2台、カワサキのヴァルカンが1台、BMWのK100、R100、R80が各1台の計6台。

 じつは、400ccよりも大きなバイクに乗るのは初めてだ。中型限定の免許しかもっていないので、当然だが。とりあえず、ヤマハのヴィラーゴに乗ってレンタルバイク屋を出発。時刻は午前8時。

 少し走ると、乗っているバイクに慣れてきた。隣を走る車に乗っている子供がこっちを見ているので、手を振ると喜んでくれた。ちょっとうれしい。

 パース市街を抜けて40号線へ入り、東へ走る。オーストラリアは日本と同じ左側通行だ。制限速度は市街地が70km/h、郊外で90km/h、人家が無いようなところは110km/hになる。

 バイクで走っていると、やっぱり「旅をしている。」という実感がある。自分でバイクを走らせて移動しているからだろう。

 パースを抜けて50kmぐらい行ったところで、もう1台のヴィラーゴが突然スローダウン。最初は原因がよくわからなかったが、タンクをのぞいてみると、ガソリンがあまり入っていない。ガス欠だ。(^^;) そ、そんな〜。バイク屋は「満タンになっているから、満タンにして返してくれ。」と言っていたのに・・・。

 次の町まで100kmぐらいある。とりあえず、燃料コックを「リザーブ」にして、リザーブタンクに残っているガソリンで走る。しかし、数十km行ったところで再びストップ。ガソリンは完全に空っぽ。まわりは地平の彼方まで牧場で、羊が点々といるだけ。周囲数十kmの範囲には、人間は我々しかいないような気がする。次の町まで距離がありそうだ。仕方がないので、R100の燃料を抜き取ってヴィラーゴに入れ、何とか次の町に到着。ガソリンスタンドがオアシスのように見えた

 給油は基本的に客が自分で入れるらしい。ガソリンは「Readed」(有鉛)と「Unreaded」(無鉛)の2種類が基本で、「Premium」は都市の大きなスタンドに行かないと無かった。「Super」というのもあったが、これも無鉛ハイオクだろうか? 料金は「Unreaded」が70〜75セント/lぐらい。銘柄は、ほとんどがShellかBP。

 いまだに「Readed」が普通に売られているのは、おそらく、現役の古い車が多いから。オーストラリアには車検というものが無いのだ。20年ぐらい前の日本車などが普通に走っている。

 給油したついでに、そこで昼食。それ以降のスタンドでもそうだったが、スタンドは、給油所と食堂と雑貨屋を兼ねたようなところが多かった。平原の中の「町」はスタンド+民家数件という構成のところも多い。

 西オーストラリアは今が乾期。空は深く青く、雲はほとんど無い。それにしても暑い。Wave Rockの直前のHydenで給油した時、スタンドのおじいさんに、"It's very hot."と言ったら、"Not hot."と言って笑っていた。これでも、まだ暑いうちに入らないらしい。空気は乾燥しているが、やっぱり暑い。走っていると、暑さと風で水分を失うので、給油の度に人間も給水。飲み物は、天然水(Natural Water)か、スポーツドリンクを飲んだ。

 午後2時半ごろ、ようやくWave Rockに到着。しかし、観光地なのに人がいない。我々の他は2人だけ。しかも、今日は日曜日なのに。そんなわけで、Wave Rockは、ほとんど貸し切り状態でした。

 帰りはR80に乗って出発。BMWは名車という評判が多いが、なんだか癖が強くて乗りにくいバイクだ。どうもしっくりこない。このR80が古いからだろうか。Readedの燃料使ってるようなバイクだからなあ。でも、途中、互いにバイクを交換しながら帰ってきたのだが、どれに乗っても20〜30km走ると、だんだん慣れてきて、「これも悪くないかな。」と思えてくるから不思議だ。

 目が痛い。バイクのミラーで自分の顔を見ると、目が真っ赤だ。午前中は東へ向かって走り、午後は西へ向かって帰ってきたせいで、ずっと太陽と向き合っていたからだ。と、思っていたのだが、どうも、そのせいだけではなかったようだ。南極上空にオゾンホールが広がっている影響で、オーストラリアも紫外線が強くなっているのだそうだ。こんなのどかな平原で、こういうかたちで環境破壊の被害をうけるとは思わなかった。

 帰り道は半分ほどもどったあたりで日が暮れてしまった。ううむ、危険だ。カンガルーは夜行性なので、夜間は急に飛び出してきたりするのだ。行きも、ところどころで交通事故に遭ったカンガルーを見たが、こうなると他人事ではない。慎重に走りながら、平原を抜け、ユーカリの森を抜け、なんとかパースのホテルに帰還。すでに夜の9時を過ぎていた。

 こうして、往復700kmの日帰りツーリングは無事終了したのでした。


戻る